« 連休は。 | トップページ | 山崎 »

2007年5月 7日 (月)

いつかの思い出

42

RICOH GR DIGITAL

いつかの話の続き

たぶん半年以上前の続き。

㋓さんのリクエストにお答えして。

あれはもう5年以上前の事。

確か3月末位の春の事だったと思う。

その日、人と会う約束をしていて、待ち合わせ場所はJR北千住駅改札前だった。

改札前に5分前に到着してゲートを出てくるのを待っていると携帯にメールが来た。

「寝坊したので1時間遅れる。」

「もうちょっと早く連絡しろよ」と思い、帰ってしまおうかとも思ったが、ちょっと気になる場所があったので、そこで時間を潰そうと考え、帰るのはやめておいた。

その当時はちょっとしたクラカメブームで月間カメラマン別冊の「カメラGET」という中古カメラ専門誌があり、隔月で発行されていた。

その雑誌には各地のクラカメ店の情報が4ページほど掲載されていた。

また、当時はブームに乗り、カメラ店の新規出店が相次いでいた。

廃業話ばかりの今では信じられないが、どの店にも活気と中古カメラがあり、カメラ店めぐりが楽しい時代だった。

GETのカメラ店紹介ページは常にチェックを入れていて、最近北千住に新しい店がオープンしたのは知っていた。場所も大体頭の中に入っていたので、暇つぶしに冷やかしにでも行こうかと軽い気持ちで、東口に足を向けた。

北千住駅前は最近の再開発で様変わりして、ずいぶんと便利な町になった。しかしながら綺麗に便利になったのはここ最近の事、それも西口周辺だけなので、東口は以前からの下町の面影を強く残している。後に映画やドラマにもなった「嫌われ松子の一生」と言う小説があったが、松子の最後の場所とされたのが、東口徒歩10分位の所の荒川沿いと言う設定になっている。

普段はあまり利用することのない、東武伊勢崎線寄りの薄汚れたエスカレーターを降りて、東へ向かって歩き出す。

エスカレーターの下は商店街の始点になっていて、右手に一階がパチンコ屋、2階に古びた喫茶店が入ったビルがある。この喫茶店には以前一回だけ入った事がある。注文を取りに来たボーイの眉毛が綺麗に剃られていて、驚いた覚えがある。その奥にはコンビニとリーズナブルなステーキのチェーン店。左の角にはカウンターが何席かあるだけの小さなラーメン屋。お菓子の安売りショップ等が並んでいる。

目的の店はその先の十字路を、左に曲がった先にあるはずだった。

左に曲がってまっすぐ歩くと、店は直ぐに見つかった。八百屋や歯医者に銭湯、外壁に蔦が絡まり、紫色したガラス扉の付いた寂れた喫茶店などが並ぶ、昔ながらの通りの左奥にポツンと位置していた。その先にはもう殆ど店は無く、右手に大きな集合住宅が立ち並んでいる。こんな場所にカメラ屋が新たに出来るとは信じがたい場所だった。

こんな場所なので、品揃えも期待出来そうに無く、まずは様子見と、ゆっくり、でも立ち止まらずに店の前を通り過ぎてみた。

店内は中央と左右にガラスケースがあるようで、奥にカウンターが見え、オーナーらしき人物が、何かかがんで作業をしていた。体格が良く色付きの眼鏡を掛けた横顔は、近寄り難い雰囲気があり、中に入る事が出来なかった。

ゆっくりと通り過ぎてから、先の集合住宅の前で立ち止まり、考えた。

どうしよう?

木製のガラスケースのある、ちょっとクラシックな感じが漂う面白そうな店だけれど、マスターは怖そうだ。でも折角来たんだし...

しばらく考えてから出した結論は、もう一度様子見しよう。ただし今度は立ち止まってみよう。

意を決して歩き出し、何気ない風を装って店の入口で立ち止まる。入口に向かってジャンク箱が2,3個置いてあったので、あまり興味は無かったが、ガサゴソとやってみる。案の定、特にめぼしい物は無く、このまま撤退するか、奥まで踏み込むかを考えている時、奥から声を掛けられた。

「カメラ好きなの?」

こんな感じで声を掛けられた。

「ええ、まあ...」

今思い返すとずいぶんと失礼な、気の無い返事を返した。

しかしその一言がきっかけで中まで入る事が出来た。

奥のガラスケースには、一風変わったカメラが何台か並んでいた。

「えっこんなものまで。」北千住とは思えないマニアックな品揃えで驚いた。

その間にもマスターと少し会話を交わしたのだが、何も覚えていない。

ちょっと気分が乗ってきて、「これは何か買って帰らなければ。」といつもの悪い癖が出ていた。

その時に目に止まったのが、ライカの90mm用のフード。綺麗なものが、格安で出ていた。ちょうどエルマー用の物が欲しかったので、「これ見せてください。」と声を掛けた。小さなガラスケースから出してもらい、薦められたカウンターの椅子に向かい合って座り、雑談しながら一通りチェックした。既に出してもらった時から買う事は決めていたので。

「これ下さい。」

「えっ本当に買うの?」

「えっだって安いから...」

「どうもありがとう」

変な会話だった。

お金を払いながら、ライカの話になった。「好きなの?」「ええ、かなり」「若いのに珍しいね。」「そうかな?」そんな話をしていると、「35mm用もあるよ。」と言ってもう一つフードを出してきた。「おお、いいじゃないですか」美品では無かったけれども十分綺麗な、しかも格安のシングルフックフードだった。

結局そのフードも買ってしまった。

そろそろ1時間ほど経っていたので、席を立った。

「また、来てね」

「会社近いんで、また顔出します。」

そんな感じで店を後にした。

店を出た後、待ち合わせていた人と合ったのか、何処に行ったのか、何を話したのか。全く覚えていない。でもなぜかこの出会いだけは記憶に残っている。

これがこの後5年以上、そして現在も続いているAntiquaryとマスターのAさんとの出会いです。

まさか、ちょっとした時間潰しのつもりで入ったお店と、こんなに長く付き合う事になるとは、思っても見なかった。Aさんは見かけは怖いけれどとっても気さくでいい人です。初めて声を掛けられた時、あちらもかなり緊張していたと聞き、以外と小心者なのね。と笑い合いました。

この後毎週店に顔を出すようになり、スタッフだったTさんやカウンター嬢の㋓さん。そして八重寿倶楽部の方々との出会いや、銀座移転後の出会い等々あるのですが、その話はまたいずれ気が向いた時にでも。

|

« 連休は。 | トップページ | 山崎 »

コメント

文字が小さくて読みにくかったので、修正しました。

投稿: robert | 2007年5月 8日 (火) 14時03分

緊張感と、ノスタルジー交錯するストーリー展開に、手に汗を握って読み進むと、おちは、ば、番長~~~。
うんうん、納得。
僕も最初会ったとき、この人絶対族のヘッドだったなと思ったもん。
続きを楽しみにしてます。
PS、ロバートさん、作風変わったね。間違いなくイカ焼きによる、遺伝子レベルのみゅーてーしょんってやつです。
よかですよ。

投稿: ばんきん | 2007年5月17日 (木) 22時49分

族のヘッド...
それはさすがに、思っていても書けませんでした(笑

よかですか。
時間ある時、また書きます。

投稿: robert | 2007年5月18日 (金) 08時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 連休は。 | トップページ | 山崎 »